2008/09/20

今日の仕事場/病害虫と植物の関係

 本日の午後は、公開シンポジウム「マツタケがつなぐ世界」(主催:京都大学マツタケ研究会+まつたけ十字軍)に出席。なかなか興味深い話しが続いた。最後の方で昆虫学の先生から「松の木とマツカレハ」の関係が紹介された。次のような内容だった「マツカレハ(*1)の卵や幼虫を松の木に放す、健康なマツや自然度の高い環境にあるマツに放しても決して大きな被害にはならない。幼虫が生存出来ない、成虫にまで成長出来ない。つまり捕食者(場所によって捕食者はアリやハチ、鳥に変化する)によって食べられてしまうからだ。ところが別の場所のマツに放すと大きな被害を出す。そこには捕食者が存在しないからだ。また、松の葉は三年間つく、小さな毛虫は若い葉っぱを食べ、成長するごとに古い葉っぱを食べるようになる。管理された庭の木はわざわざ古い葉っぱを取ってしまう。もし大きな毛虫が古い葉っぱを食べてくれるなら、わざわざ人が取らなくてもいい。毛虫が落とす糞も大切な養分となることも考えられる。害虫は多いから害虫で、少なければ益虫になるんだ。(という解釈も出来る)」(言い換えれば人為的に古い葉っぱを取っていれば大きな毛虫は防げるか?)
 このことを庭づくりに当てはめれば、庭の昆虫が多様性に富めば害虫被害は少ないと言うこと。単一植物の花壇は極めて病虫害に弱い。
また一昨日はキノコの研究者の方に「キノコと樹木の関係」を教えて頂いた。「キノコには、腐朽菌という種類がある。腐朽菌は樹木の養分をもとに成長する。腐朽菌が付くと樹木は弱っていく。腐朽菌は健康でない植物を早く分解させることに役立っている。ただし、いくらキノコが菌糸を樹皮にいれたとしても健康な樹木はそれをはねつける、ぜんぜん大丈夫。」(ちなみに松茸は共生菌、松茸が生えている松は成長がいい)
 なるほど、この2つの話しをまとめると病害虫の発生は、植物が生育する環境と植物そのものの健康状態に左右されるものであることがわかる。桜並木などでただ一本だけ病虫害に侵されている木や唯一の庭木が毛虫に食われているケースを見る(Photo)。これは、その木の健康状態や、その場所の生態系の脆弱さを物語っている。今まで自然の山や森を見て経験値として知ってはいたが研究者の方の話しを伺うとなるほどと頷かずにはいられない。【2008/09/20】

Photo: 毛虫に食われて無惨なソメイヨシノ、実はこの桜が植えてある場所は地下水位が非常に高く、桜を始め多くの樹々の樹勢は非常に悪い。弱った木は、病虫害への抵抗力が小さい。殺虫剤を撒いたとしても根本的な解決は出来ない。木が大きくなり地中に根を張り始めると根腐れで枝の先が枯れてくる。2008/09@滋賀県旧豊郷小学校の庭

*1:マツカレハはカレハガ科の一種、日本全国に分布。終齢幼虫は体長75mmに達する大型の毛虫で、俗にマツケムシと呼ばれています。毒性はドクガほど強くありませんが、刺されると激痛あり。

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