2008/09/14

庭を旅する/第三歩 素夢子の庭(京都)★★☆☆☆





京都のビル街・烏丸三条から西に入った所に「素夢子(そむし)・古茶家(こちゃや)」という韓国料理店がある。今日は森林再生に関しての会議、私たちが陣取ったのは外壁と店内の間に設けられた小さなスペースの外テーブルで食事をしながら。店の入口で立ち止まり、前の草花を眺め一言二言、人の声が中まで良く聞こえる。店と道路との間には、版築(はんちく)(*1)で造られた低い壁を持ち、わずかな隙間にたくさんの草を生かし、独特の庭を創っている。面積にして二畳程度の小さなもの。そこに生える草は「雑草」と呼ばれているものたち。店の軒下から道にせり出した柳が唯一の木。店に入るにはまずそれらの雑草をまたぐことになる。とても狭い場所なのに、遠くからでもよく見え、ビルに囲まれた場所とは思えない気持良さ。版築壁と草花だけをみると、どこかお寺の風景を切り取ったようでもある。ここは私が考える「まちのツボ」をしっかり押えた庭だ。小さいながらも効き目は大きい。まちのなかに大きな緑があり、それぞれが連続すればベストだが、今の街の環境を考えると困難である。しかしこんな小さな緑でも要所要所にあり、それがつながればとてもいい環境がまちに生まれるに違いない。密集した街では、新しく1ヘクタール(100m×100m)の公園ひとつを確保することはとても難しい。それよりも、100円パーキング2台分(25m2=5m×5m)の緑地100箇所を確保し、幅1.0mの(分断しない)草地を7.5kmに渡り連続させる(これも同じ1ヘクタール)ことでもさまざな効果が期待出来る。これは決して無理なことではない、なぜなら今や過剰にできてしまった100円パーキングを買い取って、現況の歩道や車道の緑地をもう一度、しっかり生態的に復元・再生すればいいからだ(言うが易しは承知の上)。実現すればすごいエコロジー・シティーができることになる。そのためにも「素夢子」の看板娘の雑草たちが、別の店でも活躍してもらいたいものだ。この程度の余地を草地にするのであれば経営者にとってまったく負担にはならないだろう。つまらない看板よりもはるかに店の魅力アップになる。地に生きた緑の看板が手をつなげばきっと何処にも無い快適できれいな街ができるだろう。街が生んだ環境の悪化は、まず街の中で出来ることから、出来るやり方で解決すること大切。
 会議の席での高田先生(森林生態学)のことば「(自分は、人間は)人類が滅びる日が判っていてもその日まで若木を植える行為をする(するべきだ)」が私にとって今日の宝物だ。(森林再生の最先端の研究者だけにその危機感が伝わってくる)【2008/09/13】

●素夢小・古茶家/add:京都市中京区烏丸三条西入/tel:075-253-1456/open:10:00〜21:00/定休日:水曜日

*1 版築(はんちく):壁を造る場所に両側から板などで囲み枠を建て、枠の中に粘土・土に砂利などを混ぜ、つき固めながら建造した壁もしくは、その工法。身近な素材で強い構造が得られるため、古くから民家の壁、城の土台、古墳などに使われた工法。万里の長城もこの工法で造られている。

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