2009/08/24

天狗の巣

 今年も始まったボーダレス・アートミュージアムNO-MAの地域交流事業(注1)。初日は今週8月30日。昨年までの「まちの木霊」、「八幡堀のカッパ」につづく「神様三部作」の最終編。今年のテーマは「天狗を探せ」、はたして現代に天狗は生存しているか否かはともかく八幡山に天狗を捜す。八幡山の天狗さまにお話を聞こうと言う試み。お話を聞くには、それに相応しい場所が必要である。さっそく会場の竹林に「天狗の巣」の試作を行なった(注2)。周辺の竹を伐採し、それを素材に直径2.5mほどの巣を造る。出来上がりが上の写真、すべて竹が材料、その他のものは一切なし。なかなかの出来栄え、不思議なことに簡単な囲みだけなのに中に入るとほっこりする。これが住処と言うものだ。たった少しの材料でも結界があればそれが家となり庭となる。はて?この竹の住処(巣)どこかで見たことがある。子どもの頃に友達と作った「基地」にも、最新のドーム型テントにも似ている。いやいやマレイシア半島の森奥に暮らす「オラン・アスリ」の家、ボルネオ島やパプアニューギニアなどなど熱帯の森にすむ原住民の狩り小屋やイヌイットのイグルー(雪洞)、アフリカの土の家、モンゴルのパオ・・などに素材の違いこそあれとてもよく似ている。自然の中で入手出来る素材を利用することは、違う環境の中においても自ずと同じ様な構造体(経済的、力学的、合理的な)になるんだなと思った。現代の最新の建築もテントも、結局この構造を超えてはいない。しかし、そしてそのミニマムアートとも言える構造体を生み出した原住民の多くは、近年の地球規模で起っている環境の急激な変化の中で耐えている。ひょっとするとカッパや天狗は日本の一原住民だったかもしれない。彼らの暮らしや造形はミニマムアート、アースワーク・・・まさにそのもの。たして天狗さまは現れるか! 
 自然生態的な視点から天狗を探ると、山に住まう鷲・鷹の存在が浮かび上がる。確かに霧の中にたたずむ鷲・鷹の姿は天狗をイメージさせる。さて八幡山ではオオタカの飛翔を見たことがある、小天狗ぐらいは現れてくれるだろう。
注1:右の「つながり」をご覧下さい。注2:所有者・管理者の許可を得ています。