2008/10/22

アーボリストと言う職業(1)

「庭にはイノチの風がふく」に奈良から参加してくれた大学の後輩・木登り庭師(*1)小林君がフリーペーパーに掲載している樹木エッセイを送ってくれた。彼はイギリスで高木の維持管理手法を学んできた。街路樹に20mをはるかに超し、直径1m(歩行者の目の高さで)以上の太さの樹木があたり前に道路際や公園、歩道空間に生育するイギリスで生まれた技術。言い換えれば、木が成長することは新陳代謝の結果である枝葉を下に落とすことを意味する。それは歩行者にとって時として危険であり障害となる。そのために歩行者の安全を守るために木を伐るのではなく、ちゃんと手当(管理)を行うという考え方である。残念ながら日本ではこのように技術は発達しなかった。なぜなら歩行者の安全のために伐るからである。(悪いものは元から絶つと言う訳だ=木が悪者になっている)元々、木を伐って植える技術(この植える技術はすばらしい)があるからだ。しかし今の日本の街中から優れた(生態的も風景的にも)樹木がなくなる現状では、伐ることよりも残すことを優先すべきだ。今までここは大丈夫と思われていた神社・お寺の森にまでその危機はやってきている。さすがに木をバッサリと伐られることは少ないが落葉・落枝の苦情で(やむなく)立派な枝を切られることは日常的に行われている。見るも無惨な姿となった樹々が多くある。切れば良いってもんではない、元来、日本庭園で培われてきた切って育てる・育てるために切る考え方が現在では欠如している。悲しいことに今や神主や住職までもが落葉を嫌っている。そして造園屋は、庭木の剪定に関しては世界に誇る技を持っているが、自然樹木の管理に関しては全くといっていいほどできない。今こそ必要なのが小林君が学んできた技術、自然樹木・樹林の「手当・世話」をどう考えるかと言う技術と身体的な技である。
 さて話しを彼の樹木エッセイに戻し、僕は今日は皆さんにこの質問をします。「あたなの好きな木はなんですか?」【2008/10/21】

*1:木登り庭師=アーボリスト 高さ30mを超える高木の特殊剪定・管理技術。クライミングギア大国イギリスならではの技術応用で、岩登りの技術と道具(ザイル、ハーネスなど)を駆使して、英国王立植物園が培ってきた樹木管理を基本に、樹木の生育環境に不可をかけず、かつ安全に行う樹木管理技術および技術者。

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