2008/12/28

犬矢来(いぬやらい)

 自宅近くの大きなお屋敷の横を通ると新年を迎えるためお庭から庭師のハサミの音が聞こえていた。外塀の犬矢来(いぬやらい)も治したばかり。古い竹材の中に混じる青竹の部位がなかなかきれいだ。悪くなった部位だけを交換し続ける。全部を新しい青竹に変えてしまうよりもなんだかこちらの方が「遊び」や「ゆとり」そして「品」のようなものを感じる。こんなつぎはぎの模様がきれいなのも本物の材料としっかりした仕事だからこそ、プラスチック竹ではこうはいかない。
 犬矢来(いぬやらい)を辞書で引くと「道路に面した外壁に置かれるアーチ状の垣根。竹や木などでできたものが多いが、現在は金属製も多く用いられる。馬のはねる泥、犬走りと呼ばれる軒下を通る犬や猫の放尿から壁を守るもの。駒寄せから発展したとも言われ、泥棒が家に入りにくい効果もある。」とあるが、本来は雨の跳ね返りから家の壁の汚れや柱の地際の腐りを保護するための工夫。実際に犬矢来(いぬやらい)が巡らされた壁下をみると汚れや腐りによる痛みは非常に少ない。しかし今では、外塀にとって最大の迷惑は雨による汚れや腐り、イヌのオシッコ防止よりも、駐輪・駐車やゴミのポイ捨てのようである。【2008/12/27】Photo:@京都市左京区聖護院

2008/12/26

泥団子プロジェクト「NI-WA=NO-MA」

 ボーダレスアートミュジアム・NO-MAの地域交流事業「泥団子プロジェクト/NI・WA=NO・MA」のまとめ展が先週から始まった。3回にわたるワークショップの様子と最後に描かれた絵が見れる。土をこねる、草を触れる、劇を演じる、音を楽しむ・・・近江八幡の素材:水・土・植物・空気がこれほどまでいろいろな可能性と楽しみを与えてくれたことに心より感謝。加えて忙しい日常業務の間にこれほどの展示をしてくれたSさんにも心より感謝。地域交流事業・・?と考えると、僕たちは人と人の交流をイメージするが、人と人に加え「自然との交流」、人を支えてきた「町を知るための工夫」を土台に据えることで魅力的になることが判った。近江八幡を訪れる観光客のみなさんにも是非見てもらいたい。「泥団子プロジェクト」のまとめ展をご覧になりたい方は、受付でひと言声かけをして下さい。→会期終了しました。【2008/12/25】

NI-WA=NO-MA・その11=シードボール「かいわれ団子5」

 久しぶりに近江八幡のNO-MAの庭をのぞく。シードボール(八幡団子)は、2週間前よりもずっと緑が濃くなってきた。草の苗の背丈が伸びたと言う訳ではないが緑の勢いを感じる。すっかり泥団子の地面は見えない。そして団子島のど中に生えてきた水仙も同じく周りの砂利に生えているものよりも同じく緑の勢いが違う。なんだかシードボールと共生しているみたい。あと2週間もすれば水仙の花も咲きそうだ。緑の水盤に生けられた水仙・・・とてもきれいだと思う。【2008/12/25】Photo:@滋賀県近江八幡市 ボーダレス・アートミュージアムNO-MA 

2008/12/18

夜の京都府立植物園



 京都府立植物園の夜間観覧が先週末から始まった。昨日、仕事帰りに足をのばす。動物園では「ナイトサファリ」と称して動物の夜の生態を見せる試みもあるが、植物園の夜間観覧はあまり聞かない。夜間観覧は植物の生態を見せると言うより今回も例外ではなくイベント的(観月とか夜桜とかも含めて)なもので植物とはさほど関係はない。いわば集客のためのサイドメニューといったところか。イルミネーションのチープさやデザインの悪さはなんともしがたい、しかしゆっくり歩くうちにそんな思いはどこかに消えてしまった。暗闇を見ながらゆっくり歩く、嫌な雑音のない場所を歩く、しっとりとした空気の中を歩く・・・そんな時間の中から夜の植物の様子がよく判ったからだ。つまり動物と違って全くといって良いほど活動をしていない。昼間のような植物達のざわめきが感じられないのだ。やっぱり太陽光をエネルギーに変えて生きている生きものだと言うことが判る。入園料は200円、街の中でゆっくりと暗闇を歩ける時間は貴重でお買い得か。しかも温室の入館は特別に無料。外を歩いて冷えた体に温室のほんのりとした暖かさは格別。特別夜間観覧:12月13日(土曜日)から23日(火曜日)毎晩17時30分〜20時(入園19時30分)
【2008/12/17】Photo: 夜の温室(府立植物園のHPより)、植物園自慢の木・トウカエデ(上)とハリモミ(下)のイルミネーション。

2008/12/10

NI-WA=NO-MA・その10=シードボール「かいわれ団子4」

 近江八幡にあるボーダレス・アートギャラリーNO-MAの庭のシードボールの近況報告。沢山の実生(みしょう)がびっしり生えすっかり泥団子は見えない。数えてみると混ぜ込んだ種類の約半分・6種類ぐらいが発芽しているようだ。春になればもう少し種類が増えそう。【2008/12/10】
Photo:@近江八幡市ボーダレス・アートミュージアムNO-MA

2008/12/09

ベス・チャトー 荒れ地で育(はぐく)む奇跡の庭



 NHKハイビジョン特集「ベス・チャトー 荒れ地で育(はぐく)む奇跡の庭」 の録画を観た。(放送:11月27日、午後8:00〜9:50、NHKBShi)ベス・チャトー・ガーデンズは、荒地を美しい庭に変えた「奇跡の庭」と言われている。イギリス南東部エセックス州のこの庭は、かつて果樹園栽培地の中で農地としてあまりにも土壌が悪く捨て去られていた場所。ここの土壌は、2つの要素から成り立っているのだそうだ。ひとつは4千年から1万年も前の氷河期に、溶けて氷河が運んできた砂利が混じった土・・・。そしてもうひとつは、重い粘土質の土・・・。砂利と粘土を合わせ持つ、まさしく植物栽培には不毛の土地。そんな荒れ地を美しい庭に変えた「世界一のプランツ・ウーマン」と呼ばれるベス・チャトー(Beth Chatto)さん(85歳)。庭作りを始めて半世紀、イギリスでも一番雨が少なく乾燥し冬は零下、夏は30度にもなる過酷な土地で1年中ダイナミックな美しさを保つ「奇跡の庭」を作り出してきた。その秘密は植物を花の色だけで選ぶのではなく、葉の形や植物が育つ自然環境に徹底して寄り添い、生物本来の力を引き出すことだと言う。それは9年前に亡くなった夫アンドリューさんとともに育んで来た園芸の理論、そしてベスさんの人生の理念でもあると言う。
 庭は、大きく水辺の庭(WETLAND GARDEN)、森の庭(WOODLAND GARDEN)、そして砂利の庭(GRAVEL GARDEN)の3つのゾーンからなっている。特に砂利の庭は、乾燥に強い植物と砂利で構成され、水遣りを一切しなくても育つようエコロジカルな庭造りを実験。彼女の言葉で特に印象に残ったのが「庭づくりと言えども貴重な水を使っていていいのだろうか」、「庭づくりを道徳で考えるのではなくこれは哲学」、「これからの地球温暖化の時代の庭づくりをどう考えるか」・・・。半世紀に渡る経験を通して地球環境も考えて作る彼女の庭作りには、学ぶものが沢山ある。植物層に貧相なイギリスでは使用する植物の大半が他国から移入されたもの。植物に手をかけないでも勝手に育ってくれる日本とは異なり、移入した以上は人が管理をするのが条件、もしくは徹底的に自然風に見せるように手を加えてきた。そんな英国の庭に人が手を加えないでも維持出来るゾーンの提案、そしてそのゾーンにあった植物の選択、きっとそれまでのガーデニングにとっては画期的なことだったのだろう。
 イギリスの書店で目にした新しい考え方「エコロジカル・イングリッシュガーデン」や「オーガニック・ガーデン」。一方、日本の庭づくりでおまじないのように使われる「イングリッシュガーデン」。どちらがどうと言うことではないが、英国ではどんどん時代のなかで変わっていく庭との関り方と考え方。ここにイングリッシュガーデンの本当の魅力がある気がする。
 番組のシーンの中で面白かったことが一つ。彼女が若いガーデナーにネギの植え方を教えている。ネギの苗を地面に開けた孔(孔をあける道具は多分、折れたスコップの柄)にズボッとさして水をたっぷりと与えている。日本ではネギが高温多湿を嫌う植物であること、また倒れにくくする工夫として、予め乾燥させた苗をウネに倒して置き、根の部分に軽く土をかけるだけ。これは種類が違うのか、土壌が違うのか、気候が違うのか? 彼女が日本の植え方を見るときっと驚くだろうな。
 番組全体のストーリーメーキングが少し気にかかるが、彼女の庭での仕草や表情、インタビューは面白い。【2008/12/07】
次回放送予定:2009年1月3日 NHK総合8:00〜9:30

2008/12/05

フェノロジーを楽しもう

 仕事帰りに近くの岡崎公園を散歩する。昨日とはうってかわって肌寒い雨天。今日の雨で紅葉する樹々の下にそれぞれの色鮮やかな円模様が出来上がっている、落葉が雨で濡れて飛ばないので雨は雨でいい。トウカエデの並木でおもしろものを見つける。トウカエデはきれいな紅葉で公園や街路樹ではよく使われる、そのトウカエデの並木の中に一本だけ黄色の葉をつけたトウカエデがあった。地面に出来た紅色の円模様に一本だけ黄色の円模様。同じ種類の木なのにこれだけ色が違う。これも木の個性(*1)だろうか。普段、夏や冬には気づかない木の個体・特徴を見ることができた。だったらトウカエデの並木に紅葉する個体と黄葉する個体を交互に植えると秋におもしろい季節変化が楽しめるかなとも思った。他の樹木でも、例えばシラカシは春の芽立ちに緑芽と赤芽の色違いがある、ユズリハは葉柄(よいへい:葉の付け根の軸の部分)に赤軸と青軸(あおじく)がある、このように同じ種類の木でも個性がある。ほかに「このミカンはすっぱい!」も木の個性。僕たちは木の種類ばかり気にして、木の個性を見ることが苦手なようだ。
 僕たちは春の新芽や秋の紅葉、樹々と季節の変化を楽しむ。これは植物学で言う「生物季節学:フェノロジー=Phenology」を楽しんでいることになる。今までなんとなくぼんやりと見ていた庭木や街路樹の個性が際立つ季節を楽しもう。【2008/12/05】
Photo :手前が紅葉、奥が黄葉の落葉が作った輪模様 @京都市岡崎公園、奥の建物は京都市立美術館
*1:木が植えられている土壌や位置(風当りや、日照条件)によりけっこう変化が出ることもあります。

2008/11/27

NI-WA=NO-MA・その9=泥団子で描く/後日考

 NI-WA=NO-MA「泥団子プロジェクト」を終えた後(11月24日)、簡単なスタッフ会議・反省会を行なった。いろいろな課題と今後のヒントが出た。さて今日はインターネットのexciteニュースに宮崎駿監督の記事があった。「悪人を倒せば世界が平和になるという映画は作らない—宮崎駿監督〜映画哲学を語る(前編)」記事を読み進めるうちに泥団子プロジェクトで僕が企画の根底に考えていたことに通じる文章が目にとまった。
 「・・・子どもたちが字を覚える前に覚えなければいけないことがいくつかあって、これは石器時代からやってきたことです。自分で火をおこして、燃やし続けて消すことができる、水の性質を理解している、木に登れる、縄でものをくくれる、針と糸を使える、ナイフを使える。これだけは国が責任をもって子どもたちに字を教える前に教えなければいけないと思っています。」(上記記事より)
 考えればこれらすべての体験は特別なことではなく、日常の庭づくりで体験出来ることだ。庭づくり・庭いじりこそ、現代の子どもたちが「字を教える前に覚えなければいけないこと」に満ちている。幼稚園・保育園や小学校低学年の授業に「庭いじりの時間」なんてのがあればいいのに。そして高校や大学では卒業のための取得単位として3ヶ月以上の農業体験が必要。どこかの学校でしませんか? いや宮崎監督の言葉を借りるなら国の責任、つまり「国の制度=懲農制度」としてする? 環境にも医療にも効果的だろう。【2008/11/27】

2008/11/25

NI-WA=NO-MA・その8=泥団子で描く




ボーダレスアートミュージアム・NO-MA 地域交流事業「NI-WA=NO-MA」の第三回目(泥団子プロジェクト最終回)。今日は第一回目に作った泥団子を使ってキャンバスに絵を描いた。絵具(泥絵具)は、草木や土、炭など自然の素材を加工して作ったものである。草木は煮出し、土はふるいで細かくし、炭は割って粉にすることで顔料とした。それぞれから得た顔料に土と糊を加えることで緑茶色(ヨモギ)、紫色(マメツゲ)、なんとも言い難い青黒色(イヌタデ)、鮮やかな赤紫色(ヨウシュヤマゴボウ)、茶色(桜葉+紅茶)、黒色(炭)の6色がそろう。これはかつて僕達人類の祖先が描いた洞窟壁画や地球上の各地域に暮らす先住民の絵の描き方と同じである。絵具は買うもの、チューブから絞り出すものと思っていた子どもたちには新鮮だったに違いない。参加者全員が見守る中、一人ずつ自分の泥団子に絵具をつけキャンバスに転がす。極太、極細、ゆらゆら、Uターン・・・子どもたちが泥団子と泥絵具で描いた約30本の軌跡はすべて異なり、かつ全体の統一感にあふれていた。今回のプロジェクト記録及び作品は、NO-MAの蔵で12月10日頃から展示予定である。ただし、庭に並べたシードボールの観察記録はまだまだ続く。【2008/11/24】
Photo上 : 泥団子で描いた絵
Photo中:炭を石でたたいて粉にする
Photo下:全員が見守る中、キャンバスに一人ずつ自分の泥団子に絵具をつけ転がす
@会場:滋賀県近江八幡市永原町中 尾賀商店=築150年の家屋
写真撮影:武壮隆志さん(カウチル日記 cowchil.exblog.jp をご覧下さい)

2008/11/22

アーボリストと言う職業(2)


アーボリストの小林君(*1)から彼が書いているフリーペーパーが届く。本題の堆肥づくりよりも「髪の毛を切った!」(彼の場合、伐ったという方が適切か?)ということが印象的な一文。これで木登りの時に標準サイズのヘルメットがかぶれる?【2008/11/21】
*1 アーボリストと言う職業(1)10月21日をご覧下さい。

2008/11/19

市民ガーデン(3)ニュースレター創刊号

いよいよ「(仮称)小諸・市民ガーデン」プロジェクトが動き出した。市民・地域住民の方々に広く知ってもらうためにニュースレター(まちづくり通信の中に入る)も出来上がった。今回のプロジェクトのような公園づくりは事例が少ないだけに手探り状態だ。さてさて市民の皆さんの反応は如何に!【2008/11/19】

2008/11/15

雑草を考える

 夏前にNHKでイングリッシュガーデンの番組を放映していた、紹介された庭園の一つにコッツォルズ地方の「KIFTS GATE GARDEN」があった。この中で庭のオーナーのことばが「雑草は種をつけるまえにとらなければいけない」とナレーションで通訳された。確かにオーナーは「ここのWEED(=直訳だと雑草)は取り除かないといけない」と話している(英語では)。しかし、その雑草はオーナー自身がそこに植えた結果、旺盛な繁殖を行っている植物である。(実際に植物層の貧相な英国の自然においては雑草とて人為的に植えられたものがほとんどだ)そのような庭の歴史と背景を考えるとこのNHKのナレーションは適切でない。この場合は、「この草は庭のここのエリアで他の植物が生育するために取り除かなければいけない植物」もしくは「この草は他の草の生育にとって望ましくないので取り除かなければいけない」と訳されるべきである。これは実際の取材現場のプロデューサーまたは通訳の理解不足・勉強不足によるものかどうかは判らないが、もう少し視聴者に対して適切な表現をしてもらいたいと思った。(取材の中で、その雑草はどういうものか、どこから来たものか、なぜ必要ないのか・・・の裏をとることが大切)このちょっとしたあやまちが庭づくりにおいてある誤解を生み出すことになる。つまり「雑草はとらないといけない」。このような初歩的なミスが最近のTV番組に多い気がしてならない。一方、今年6月に世を去ったターシャ・チューダの取材では、この点については感心するばかりにきっちりと取材がされていた。こちらは気難し屋のターシャ・チューダとの長期にわたる取材の結果だと思う。やはり時間のなかでの共有体験がいいものづくりには欠かせないと言うことか。話しを庭にもどし「雑草の考え方」として、「ある特定の場所で自分が育てたい植物の生育を妨げるある種類の草花を雑草」と言うことにしよう。だからどのような草花も雑草となり得るし、また雑草は必ずしも取り除く必要は全く無いのである。
 小諸・市民ガーデンの打合せでW氏のご自宅でお世話になる。ベッドの横にターシャ・チューダの写真集を見つけ、読みふけるうちに少し前に気になったことを思い出した。【2008/11/16】
Photo : 小諸のWさんの庭、先日NHKの庭番組で紹介された。中央の井戸は、実際の井戸ではなくダミー。

2008/11/09

草木染め

近江兄弟社学園のヴォーリズデイ(学園の文化祭的な行事)に参加させて頂いた。小学校保護者の方々と「草木染め工房」(*1)を開いた。メニューは二種類、「桜の秋葉染め」と「セイタカアワダチソウの花色染め」。桜の葉(学校の正門)とセイタカアワダチソウの花(近くの河川敷で採集)の煮汁(染液)で木綿のエコバックを染色した。媒染液の材料は小学校の水田から集めたワラ灰とミョウバン。材料は出来るだけ学校とその周辺で簡単に入手できるものにこだわった。結果は写真を見ての通り、材料も条件も同じなのに作者ごとに違う色と模様がとても面白い。(Photo : 黄色がセイタカアワダチソウ、赤茶色が桜葉。桜葉染めのバックは桜餅の香りがします。白い部分は輪ゴムで絞りをかけた部分。)
 簡単に出来るので庭の落ち葉や剪定した枝葉でも試したい。方法を簡単にご紹介します。1)染液をつくる:まず鍋に枝葉(枯葉、生葉・生枝を問わない、でも泥や汚れは洗っておく)と水を入れて20〜30分ぐらい火にかけ、煮汁が出たら枝葉などをザルで漉し、残った煮汁が染料となります。2)媒染液をつくる:灰が手に入ればそれを使い、なければ薬局でミョウバンを買って(大きめの洗面器にティースプーン一杯ぐらいをいれ水が透明になるまで撹拌する)それぞれの水溶液を作っておきます。なければ無媒染でもかまいません。3)染める前に:布は事前にお湯で十分に洗いのり等の不純物を取っておく。布を輪ゴムで縛ることによって模様もつくれます。4)染める:布を作った煮汁(染液)に漬けます(ナベを火にかけたまま15〜20分)。5)媒染:布が十分に染まったら良くしぼり、別のお鍋に用意しておいた媒染液の中で5〜10分程度振るいゆすぎして発色させます(この時にまんべんなく布を液の中で泳がせるとムラが出ない)。5)最後に:布を水でゆすぎ、絞り、干す。乾いた後にアイロンをあてる。アイロンで熱を与えると変色する場合もあります。どんな色に染まるかはお楽しみ(*2)。染めの作業はほとんど料理の世界。庭いじりは植物を育てること以外にもこんな愉しみもあった。皆さんも一度、お試し下さい。
【2008/11/09】@滋賀県近江八幡市近江兄弟社小学校

*1:「染め」は古来より草木や泥を染料としたものだから「草木」という現代の言い方に抵抗がある、しかし今回はあえて「草木染め」としました。現代の染めを「化学染料染め」と言う方が正しい。
*2:草木染めのテキストを読むといろいろなことが書かれていますが、あくまでも庭の愉しみの延長なのでこの辺りはこだわりません。むしろ自由に楽しみたい。

2008/11/08

NI-WA=NO-MA・その7=シードボール「かいわれ団子3」

NO-MAの庭のシードボールが一段と砂利の中の緑の島になって浮き上がってきた。【2008/11/08】

2008/11/07

環境カウンセラーと五十鈴川

環境省が定める制度に環境カウンセラーというものがある。環境カウンセラーとは、市民活動や事業者の中での環境保全に関する専門的知識や豊富な経験を有し環境保全活動に関する助言などを行う人材として、環境省が審査を経て登録するものである。僕もこの環境カウンセラーの端くれで、今年度末までに更新をしなければならない。さてこの更新は3年毎必要であり、3年と言う期間中に少なくとも一度の研修を受けるべきとされている(以前は更新の必要条件だった)。今年も全国の主要な地域で様々なテーマで研修が行なわれているので自分が求める内容を選び研修を受ければいい。僕は「生物多様性」をテーマにした名古屋での研修に参加した。会場は「国際会議場」と称するすばらしい建物であり、参加者数に有り余るほど広く、時期外れの冷房を効かせた部屋が用意されていた。環境問題を語るには面白い。ところが、研修の内容はメインテーマである「生物多様性」はかすっただけ、環境カウンセラーに求められている専門知識を実践として活かす内容にそったものともほど遠いものだった。その内容は、行政の考える環境教育施設の紹介に終始した。施設の将来構想といえば既に海外の環境教育系の施設が相当前から実践しているものである。どこにも独創性や先進性が感じられない。研修とは名ばかりの表面的なものだったことは残念。唯一、地元の方の実践発表は面白かった。やはり紆余曲折の永年に渡る活動は興味深い。結局、研修の終了を待たずに会場を後にすることにした、研修担当係の方に名札とアンケート用紙を渡すと「ここで帰ってしまうと研修終了証書の発行が出来ませんよ・・・」と。そんな研修終了証書の発行のことよりも研修自体のあり方を見直してもらいたいと思った。それに僕は研修終了証書なんて興味がない(もちろん興味がある人もいるだろうけど)。それよりもこの機会に伊勢神宮の森に是非とも行っておきたかった・・・、名古屋から伊勢神宮に向う。十数年ぶりに訪ねた伊勢神宮の森と五十鈴川は、期待を裏切らないすばらしさだった。たった数時間だけだが紀伊山地を源にする川の流れと周囲の森を歩き、身を浸すことは、あのすばらしい国際会議場でいくら時間を使ったとしても得られないものがある。まさにここには「生物多様性」の森があった。つまらない机上の研修よりも、ここの森を歩くほうが質も実もある。おまけにおいしい「赤福」もある。【2008/11/05】@伊勢神宮・内宮・五十鈴川

2008/11/04

NI-WA=NO-MA・その6=泥団子で絵を描こう(素材)

11月24日にNO-MAで予定している「泥団子シリーズ」の年内最終回「泥団子で絵を描こう」の為に絵の具の材料となる草木の実を探した。いっぱいあるはずのクサギとヨウシュヤマゴボウの実がぜんぜん見つからない。あてをつけていた安土文芸の里周辺を歩くも収穫はない。これには正直まいった。五個荘町に入ってから少しずつ見つかるが依然として収量は少ない。この原因を考えた、まず一つ目:連休のために路傍の草刈りがされてしまった。そして二つ目:これらの草木は人の手が入った野山・林縁に真っ先に成長する種だ。ひょっとすると以前に増して林縁に人の手が入らなくなったためにこれらも生育することが難しくなったのか。やっと見つけた場所は道路のアスファルトの端っこだった。庭づくりの話から遠い話題だがご勘弁を。 【2008/11/02】Photo : ヨウシュヤマゴボウの実 @滋賀県能登川

2008/10/31

NI-WA=NO-MA・その5=シードボール「かいわれ団子2」


NO-MAの庭のシードボールを見る。泥団子の間からもくもくと沸き立つ雲のようなみどりの若葉がきれいだ。良くみると3種類ぐらいの草花が発芽しているようだ。小さな泥団子が、小さな緑の団子へと変化し、それらが造る大きな緑の塊。これからの成長が面白そう。
【2008/10/31】

2008/10/28

NI-WA=NO-MA・その4=シードボール「かいわれ団子」


シードボールから根が出てきてあわてて地面に並べてから2週間(*2)が経った。真っ先に根をボールの表面から出した種のほとんどは枯れてしまった、根が太陽に照らされ乾燥したからだ。一方、根をボールの中に伸ばし、あるいは根が本来の地面に達した種からはようやく双葉が出始めた。ご覧のようにシードボールは、「かいわれ団子」と化してきた。かちかちだった泥団子も発芽の力でひび割れがいっそう進んでいる。シードボールの下の土中に埋まっていたスイセンは地表を泥団子でおおわれ元気な感じ。【2008/10/28】
*1シードボールを作った日/10月11日
*2シードボールを地面に並べた日/10月15日
Photo : 撮影/柴田理恵子(NO-MA)

2008/10/25

庭を旅する/第四歩 桂離宮(京都)★★★★★

 仕事で桂離宮に行く。前夜からの雨でお庭全体が瑞々しく大変に美しい。ここ桂離宮(*1)の庭はいろいろユニークな試みがされている。茶屋の窓からの風景、灯籠の形、園路の床材、飛び石の形などどれもすばらしい。このお庭を見るには事前に宮内庁に参観申し込み(*2)を提出しなければいけない。そこで今日は参観申請をせずに(*3)桂離宮の特異性が見れる庭を紹介。
 桂離宮の表門から左に道路(東方向)を進むと間もなく高さ2.5mほどの緑の壁が見える。これが桂離宮でしか見ることが出来ない「笹垣」、生きた竹を枝折る(しおる)ことで造られている。内部は「建仁寺垣」と呼ばれる竹垣があり、その表面に生きた竹が固定されている。この「笹垣」は、10年毎に造り換えられる(更新)と教えて頂く。この10年という年数は、内部の「建仁寺垣」の耐用年数と竹の寿命とが上手く合致している。この「笹垣」に使われる竹は2〜3年生竹、この竹の寿命が約12〜13年。「笹垣」は、この新しい竹の幹に切り込みを入れ、ねじりながら枝折り「建仁寺垣」の頂点から地面にそって固定することによって造られる。横から見れば地面から生えた竹(垣の庭側)が湾曲して、(庭の外側の)地面に入っていく感じ。つまり竹の根元(庭側)と頂点(外側)は地面にある。使われる竹は建仁寺垣の近く過ぎると上手く曲がらない、遠く過ぎると無駄である、そのため建仁寺垣と程よい距離を保っている。「笹垣」を造った後は、垣近くに生える竹を伐りながら手入れされる、垣を作り替える数年前からは(垣から)程よい距離に生える竹を育てていく。この将来を見据えた管理時間の計画と技術そしてユニークさに驚く。庭を手入れすると言う言葉の意味を凝縮した話しを伺うことが出来た。
 余談だが多分、この「笹垣」を乗り越えようとしても足がかりとなるはずの竹の枝葉は滑りやすく、しかも下を向いているので登れない。風景と機能を両立させたすばらしいアイデアだと思う。
【2008/10/23】

Photo(上):道路に面した笹垣(表側)、人為的に固定された竹とその背後に自由にゆれる竹との対比が美しい。
Photo(下):笹垣の裏側(つまり庭側)、竹のしなり具合がよく判る。

*1 桂離宮(かつらりきゅう):17世紀の初めから中頃までに、八条宮初代智仁親王と二代智忠親王によって造られたもので、日本庭園として最高の名園といわれています。昭和8年(1933)ドイツ人建築家ブルーノ・タウト(1880年〜1938年)が桂離宮を拝観、「泣きたくなるほど美しい」と絶賛。海外にその存在を紹介する。
*2 参観申し込み/宮内庁ホームページ http://sankan.kunaicho.go.jp/guide/katsura.html
*3 笹垣、穂垣、表門は外部に面しているので許可書がなくても誰でも見ることができます。

2008/10/22

アーボリストと言う職業(1)

「庭にはイノチの風がふく」に奈良から参加してくれた大学の後輩・木登り庭師(*1)小林君がフリーペーパーに掲載している樹木エッセイを送ってくれた。彼はイギリスで高木の維持管理手法を学んできた。街路樹に20mをはるかに超し、直径1m(歩行者の目の高さで)以上の太さの樹木があたり前に道路際や公園、歩道空間に生育するイギリスで生まれた技術。言い換えれば、木が成長することは新陳代謝の結果である枝葉を下に落とすことを意味する。それは歩行者にとって時として危険であり障害となる。そのために歩行者の安全を守るために木を伐るのではなく、ちゃんと手当(管理)を行うという考え方である。残念ながら日本ではこのように技術は発達しなかった。なぜなら歩行者の安全のために伐るからである。(悪いものは元から絶つと言う訳だ=木が悪者になっている)元々、木を伐って植える技術(この植える技術はすばらしい)があるからだ。しかし今の日本の街中から優れた(生態的も風景的にも)樹木がなくなる現状では、伐ることよりも残すことを優先すべきだ。今までここは大丈夫と思われていた神社・お寺の森にまでその危機はやってきている。さすがに木をバッサリと伐られることは少ないが落葉・落枝の苦情で(やむなく)立派な枝を切られることは日常的に行われている。見るも無惨な姿となった樹々が多くある。切れば良いってもんではない、元来、日本庭園で培われてきた切って育てる・育てるために切る考え方が現在では欠如している。悲しいことに今や神主や住職までもが落葉を嫌っている。そして造園屋は、庭木の剪定に関しては世界に誇る技を持っているが、自然樹木の管理に関しては全くといっていいほどできない。今こそ必要なのが小林君が学んできた技術、自然樹木・樹林の「手当・世話」をどう考えるかと言う技術と身体的な技である。
 さて話しを彼の樹木エッセイに戻し、僕は今日は皆さんにこの質問をします。「あたなの好きな木はなんですか?」【2008/10/21】

*1:木登り庭師=アーボリスト 高さ30mを超える高木の特殊剪定・管理技術。クライミングギア大国イギリスならではの技術応用で、岩登りの技術と道具(ザイル、ハーネスなど)を駆使して、英国王立植物園が培ってきた樹木管理を基本に、樹木の生育環境に不可をかけず、かつ安全に行う樹木管理技術および技術者。

庭にはイノチの風がふく


去る19日に「庭にはイノチの風がふく」庭話を巡る話しと歌やスライドの会を行った。沢山の方々に集ってもらえた。僕の話しは、家には大別して「かたい家」と「やわらかな家」がある。「かたい家」とは壁構造の家、「やわらかな家」とは柱構造の家。この二つは、虫の体(外骨格)とヒトの体(内骨格)に例えた。前者は石造、レンガ造など壁で支える家、自然を生活内部に取り込もうとして様々な工夫で「庭園」が発達した。一方、後者は柱で支え壁は外と内、間仕切り程度の緩やかな移動性の壁を持っているので必要に応じ自由に部屋を増やせことが出来る、また簡単に自然を内部に取り込めた。結果、家の内部さえも庭に、庭さえもリビングになってしまう自由さも持ち合わせていたために「庭園」のようなものに頓着しなかった(もちろん日本庭園のような特別な世界もありますよ、しかし日本庭園もいかに自然を内部に、精神的に取り入れようとした結果の庭)。両者ともに地域の環境を読み取った結果できた優れた建築であり庭である。さまざまな自然環境のなかで、さまざまな自然観をもって人間の暮らしが成り立っている。旅の中で巡りあった多くの「ニワ」にはまさに「命」の風がふいていた。そんな思い・気づいたことを「ニワ論・にわ感」として伝えた。なにぶん時間の制約もあり慌ただしさだけが残ってしまった感もある、反省。もう一度、今後は連続企画として続けたい「庭にはイノチの風がふく」だった。感謝。
【2008/10/21】

2008/10/20

市民ガーデン(2)国交大臣賞に選定!

今春から検討を始めていた「小諸コミュニティガーデン計画」を第19回「緑のデザイン賞」(都市緑化基金、第一生命主催、産経新聞社など協力)(*1)に応募した(8月)。やっと結果(10月16日8時3分配信 産経新聞)が出た、めでたく国交大臣賞に選定! これで一息、ただし計画コンセプトはこの公園を市民の自力施工でしようと言う新しい試み。受賞したのはいいがこれからが本番、さてどのような体験が生まれるのか楽しみである。【2008/10/19】

*1 : 緑のデザイン賞=都市緑化基金が第一生命保険相互会社の共催により、地域社会の質的向上を目指し、全国の公共団体及び民間の団体から新たに提案される緑化プランを募集し、優秀なプランに対してその実現のための助成を行うもの。

2008/10/17

NI-WA=NO-MA・その3=シードボール「ならべる」


NO-MAのスタッフ=Sさんより突然の連絡を受ける。先日作ったシードボールが大変なことになっていると・・・行ってみるとなんとすでにレンゲの種が発根し始めている。握りの弱い団子はすでにばらばらになっている。急遽、乾燥を待たずにNO-MAの庭に並べることにする、ちょうどそばにあったフラフープをフレーム代わりにして、中にシードボールを並べる。なんとぴったしフラフープの中に収まった。これらの団子たちがどのように変化するのか楽しみだ。それにしても早すぎる発根だった、植物の力にあらためて驚く。【2008/10/15】

2008/10/12

NI-WA=NO-MA・その2=シードボール「つくる」



ボーダレスアートミュージアム・NO-MA 地域交流事業「NI-WA=NO-MA」の第二回目。今日は前回の泥団子の素材にあらたに水田の土、草花の種(十数種類)を混ぜ「シードボール(称して八幡団子)」を作る。大きな手で小さなボールを作る人、小さな手で特大団子を作る人。2時間の間に大小約120個以上のピカピカのシードボールが出来あがった。これをゆっくり日陰で乾燥させ(急に乾燥させるとヒビがはいるので)、庭に並べる。シードボールは冬を越し、やがて発芽の条件がそろえばさまざまな草花の芽がボールから出るはず。夏前にはNO-MAの庭も花いっぱいになるだろう。【2008/10/11】
Photo上 : 水田の土と草花の種子を混ぜ合わせる. 
Photo下 : 出来あがったシードボール. なんだかおいしそう。

2008/10/04

庭づくりの隠し味「混ぜる」

庭づくりは身近で小さな空間に植物の生態系(群落)を生み出すことだと思う。街の中で良く目にする単一植物(主に一年草)ばかりだと手間もかかるし、費用も馬鹿にならない。そこで多年度に渡って庭を楽しむためには宿根草(*1)を基本とする植物の群落を創ることが大切。参考書を見ると植物の組み合わせとか、色の組み合わせとか、いろいろと難しいことが書かれている。また本によっては、異なることが書かれていることもある。そんな時は、自分が育ててみたいと思う植物を植えてみれば良い。植物自身が成長していく中で他の植物との関係を生み出していく。それを見ながら新しい植物を加えたり、すでにある植物を引いたり(つまり足し算引き算をする)すればいい。その時のコツは、「まぜる」こと、ただし1株づつ交互に植えて混ぜるのではなく、同じ種類または同じ仲間を数株まとめて植え、かつその他の種類と混ぜること。言い換えれば同じ種類ごとに小さな「島」を造り、別の種類の「島」と重ねてゆくこと。混ぜることによって、庭に奥行きや変化が生まれる、病虫害も起こりにくい。【2008/10/04】

Photo : 生垣も混ぜることで季節の変化を楽しめる、病虫害も起こりにくい。シャリンバイ、ウバメガシ、西洋イボタ(プリペット)、トウカエデ、イロハモミジなど5種類以上の木が混食されている。まるで上空から森を見ているようだ。昔の庭屋はなかなか面白いことしたもんだ。@京都市立美術館

*1 宿根草(しゅっこんそう)は、多年生の草本のうち、生育に適さない時期(多くの場合冬であるが、夏のこともある)には、地上部が枯れてしまうが、それをすぎると発芽して、再び生育を始める草本類植物(樹木は木本類と言う)。ただし最近は常緑性の多年草も含め宿根草と言う傾向にある。

2008/10/02

風車をつくる(2)




近江兄弟社小学校・風車づくりのワークショップ(WS)から出された4つの班案をまとめた。それぞれ工夫と悩みがかいまみれ面白い。これからより具体的な設計に入るために明日は全校生徒に4つの案を説明・人気投票を行う。このような形であってもWSに参加出来なかった子どもたちにも少しでも多くの機会をもって風車づくりに関って欲しいと思う。どれか一つにしぼると言うことではなく、全部のアイデアから良いところをいただこうと思う。【2008/10/02】

Fig:4つのグループから出された案をまとめたもの。
■第1班:昔、水田で活躍した「じゃぐるま」を利用する。
■第2班:風車で水車をまわして水を動かす、水車の形に工夫。
■第3班:風車の回転を利用して手押しポンプを動かす。連結部のウデ部分に工夫。
■第4班:自転車の車輪を利用した風車、回転すると電灯も点灯する。計画地に立っている電柱に風車を並べる。

2008/09/29

NI-WA=NO-MA・その1=泥団子「こねる・まるめる」

今日は、ボーダレスアートミュージアムNO-MAとのコラボレーション「NI-WA=NO-MA」の第1回目泥団子づくり。(詳しくは左の「つながり/ボーダレスアートミュージアムNO-MA」でご覧下さい)3日前までの申し込み状況から予想をはるかに超える総勢50数名が小さな庭に集った。前半は演劇家・金紀江(キムキガン)さんのお芝居「子犬のうんち」=嫌われ者の子犬のうんちは、実はきれいな野草が花咲くために大切なものだったという展開。今回の泥団子プロジェクトも、単なる土の塊も草花が育つための大切な大地であることをアートとして展開するもの。アートの題材の多くは自然の造形や素材から生まれる。だから単なる泥団子ではなく草木の種子をいれた「シードボール」をつくりNO-MAの庭を花でいっぱいにする計画。シードボールが天からの水と風の流れのなかで風化し、そこから草花の芽が生まれ出る、この時間経過・変化を記録しようと思う。今回はまず「シードボール」づくりの練習。素材は近江八幡にこだわった=土は八幡山の土、水は八幡山の谷川の清水と八幡堀の水、土に含まれるのは八幡の空気、そして土をこね・作るのは八幡の子どもたち。泥団子づくりは初めての子どもたちも多かったが、皆自分自分の団子を作った。参加者のお母さんのことば「この子こんなに泥いじりが好きなんだ」。土いじりは子どもの本能だ。土と水と空気の入り混じった感触、自由に形を変える塊、冷たくも暖かくもある温度感、子どもたちが自然をそして庭いじりを好きになるためにはまず土いじりが大切だ。次回10月11日は土に草花の種子を入れてつくる泥団子=シードボールづくり、これを称して「八幡団子」。夏には小さな庭がどんな庭に変化するのか楽しみだ。【2008/09/28】
Photo上:泥団子とタカノハススキ(鷹之羽すすき)の穂
Photo下:泥団子をつくる子どもたち(撮影:武壮隆志)

2008/09/26

今日の仕事場/近江兄弟社学園のジオラマ模型

近江兄弟社学園に行った。玄関ロビーに高校生がつくったキャンパスのジオラマ模型が展示されていた。少々ラフながらも建築と庭の特徴をよくとらえている。前庭広場の風車もちゃんと表現されている・・・と思いきや、やはり建物は実測作業も行ったそうだ、体を使った作業は見る者へ与えるインパクトが違う。但し、現実と違う所は隣地が森になっていること。確かにここが森ならさらにいい環境となるだろう。はたして森を作った「その心」とは何だろうか。模型を作ることとは、その場所に自分がなにを期待するのか、自分が何をしたいのかを無意識のうちに考えることでもある。自分たちが暮らす学校を俯瞰(ふかん)でとらえながらも、細部を作り込んでいく。完成までに俯瞰と細部を何度も行ったり来たりしたに違いない。きっと作り終えた後は普段とは違う学校の空間と自分に気づくはず。さてこの模型、造園学専攻の大学1回生がデザイン実習で作るほどの良いできだった。何よりも製作中の賑やかさが聴こえてきそうなところが良い。
【2008/09/26】 

2008/09/23

庭づくりの隠し味「オバナ・タニグチ・ドウノマエ」

庭づくりにはいろいろな隠し味がある。隠し味が入ること庭がずっとよく見える。今回は「オバナ・タニグチ・ドウノマエ」。
 まず一番目「オバナ」:庭を広く見せたり風景の変化をつくるために、その高さは状況で違うが「築山(つきやま)=土を盛ったところ」を造ります。その時に築山のてっぺん(一番高い所)に木を植えたり、石を置くことは避ける。てっぺんは大切な場所(神様の場所)だから、木を植えるならてっぺんの向こう側、もしくは左右どちらかの肩の部分に植える。(どちらがいいかは周りの様子で変わります)またもう一つの「オバナ」これは岬状に突き出た場所を造ったとすると、この先端にも木を植えない。この場合は少し後ろに植える。
 二番目は「タニグチ」:築山を造ったり、石を置くと何が起るか?雨が降った時に雨水が集る場所が出来ます。水は高い所から低い所に、広い所に集った水は狭い所に集ります。その水が集りやすい所は要注意、ここには湿っぽい所が好きな植物を植える。乾燥が好きな植物を植えてしまうと結果は見えている。また水を受ける植物を植えることで土が流れることも防げる。
 三番目「ドウノマエ」:さすがに今ではお庭にお宮があるところは滅多とないと思いますが、ここでの「ドウノマエ」はアイポイントとなる石や、飾り(オーナメント)です。アイポイントのすぐ前や視線の重なる場所には木を植えたりするのは避ける。自分が立つ位置とアイポイントを結んだ線からすこしずらした位置に木を植えることで奥行き感がずっと出て来ます。
 この3つのポイントは広い庭でも、小さな庭でも同じこと、もっと小さくなって植木鉢でも同じこと。【2008/09/23】

2008/09/20

今日の仕事場/病害虫と植物の関係

 本日の午後は、公開シンポジウム「マツタケがつなぐ世界」(主催:京都大学マツタケ研究会+まつたけ十字軍)に出席。なかなか興味深い話しが続いた。最後の方で昆虫学の先生から「松の木とマツカレハ」の関係が紹介された。次のような内容だった「マツカレハ(*1)の卵や幼虫を松の木に放す、健康なマツや自然度の高い環境にあるマツに放しても決して大きな被害にはならない。幼虫が生存出来ない、成虫にまで成長出来ない。つまり捕食者(場所によって捕食者はアリやハチ、鳥に変化する)によって食べられてしまうからだ。ところが別の場所のマツに放すと大きな被害を出す。そこには捕食者が存在しないからだ。また、松の葉は三年間つく、小さな毛虫は若い葉っぱを食べ、成長するごとに古い葉っぱを食べるようになる。管理された庭の木はわざわざ古い葉っぱを取ってしまう。もし大きな毛虫が古い葉っぱを食べてくれるなら、わざわざ人が取らなくてもいい。毛虫が落とす糞も大切な養分となることも考えられる。害虫は多いから害虫で、少なければ益虫になるんだ。(という解釈も出来る)」(言い換えれば人為的に古い葉っぱを取っていれば大きな毛虫は防げるか?)
 このことを庭づくりに当てはめれば、庭の昆虫が多様性に富めば害虫被害は少ないと言うこと。単一植物の花壇は極めて病虫害に弱い。
また一昨日はキノコの研究者の方に「キノコと樹木の関係」を教えて頂いた。「キノコには、腐朽菌という種類がある。腐朽菌は樹木の養分をもとに成長する。腐朽菌が付くと樹木は弱っていく。腐朽菌は健康でない植物を早く分解させることに役立っている。ただし、いくらキノコが菌糸を樹皮にいれたとしても健康な樹木はそれをはねつける、ぜんぜん大丈夫。」(ちなみに松茸は共生菌、松茸が生えている松は成長がいい)
 なるほど、この2つの話しをまとめると病害虫の発生は、植物が生育する環境と植物そのものの健康状態に左右されるものであることがわかる。桜並木などでただ一本だけ病虫害に侵されている木や唯一の庭木が毛虫に食われているケースを見る(Photo)。これは、その木の健康状態や、その場所の生態系の脆弱さを物語っている。今まで自然の山や森を見て経験値として知ってはいたが研究者の方の話しを伺うとなるほどと頷かずにはいられない。【2008/09/20】

Photo: 毛虫に食われて無惨なソメイヨシノ、実はこの桜が植えてある場所は地下水位が非常に高く、桜を始め多くの樹々の樹勢は非常に悪い。弱った木は、病虫害への抵抗力が小さい。殺虫剤を撒いたとしても根本的な解決は出来ない。木が大きくなり地中に根を張り始めると根腐れで枝の先が枯れてくる。2008/09@滋賀県旧豊郷小学校の庭

*1:マツカレハはカレハガ科の一種、日本全国に分布。終齢幼虫は体長75mmに達する大型の毛虫で、俗にマツケムシと呼ばれています。毒性はドクガほど強くありませんが、刺されると激痛あり。

イベント情報/国際ガーデン&エクステリアEXPO/会期終了

■第2回国際ガーデン&エクステリアEXPO
■第5回国際フラワーEXPO(同時開催)
会期:2008年10月30日(木)〜11月1日(土)
会場:幕張メッセ
入場券はホームページに申し込めば無料(入場券無しの場合2000円)
詳しくはホームページで http://www.gardex.jp/

展覧会情報/つながれ時間=茗荷恭介・北川陽子二人展/会期終了

■つながれ時間=茗荷恭介・北川陽子二人展
会期・10月1日(水)〜10月26日(日)
場所・東近江市能登川図書館
入館料:無料
ギャラリートーク:
茗荷恭介(鉄の造形)10月11日(土)15:00〜
北川陽子(麻織物)10月25日(土)14:00〜
関連イベント:ベーシスト・斎藤徹ソロライブ10月18日(土)19:00開演(18:45開場)定員120名、要申し込み
問合せ:能登川図書館0748-42-7007

2008/09/19

イベント情報/第23回ハンギングバスケット&コンテナ展/会期終了

■オータム・フェスタ イン みずの森2008
期間:2008年10月3日(金)〜10月19日(日)
開園時間:9:00〜17:00
場所:草津市立水生植物公園みずの森
入場料:大人300円、高校生大学生250円、小中学生150円、毎週土曜日;小中学生無料
問合せ・連絡先:077-568-2332
ホームページ http://www.mizunomori.jp/

2008/09/16

イベント情報/Happy Forest Project 2008 in Taga 〜 Green Diamond/会期終了

■ハッピィ=フォレスト=プロジェクト 2008 in 多賀
「シアワセな森はみんなの宝物みたいに、そこでキラキラ光ってるよ!」素敵な音楽、素敵なモノづくり、素敵なサービスやお店を、琵琶湖のルーツである水源の森にもちこんで、そこで過ごす気持よい時間を楽しもうというイベントです。このイベントは昨年の夏に余呉でスタートし、今年は多賀にやって来ました。(チラシより)
会場:滋賀県犬上群多賀町藤瀬高取山ふれあい公園”森のドーム”周辺/期日:2008年9月27日(土)雨天決行・荒天中止 open11:00~20:00/費用:2000円(但し公園入場料含まず)小学生以下無料/主催:ハッピィ=フォレスト=プロジェクト実行委員会(080-5364-2415・ヒライ)http://www.h-f-p.net/【2008/09/16】

今日の仕事場/オバナ・タニグチ・ドウノマエ

先日の森林再生の会議の時に聞いた言葉を紹介します。近年、気候の変化に伴い自然災害(特に雨による土砂災害、水難事故)が多い、今まで信頼されてきた砂防ダムの崩落もあった。その自然災害へのリスクマネージメントをちゃんと森に暮らす人々は古くからいい伝えとして持っていたと言う。「オバナ・タニグチ・ドウノマエ」なんだか呪文のようだ。「オバナ」とは、すーっと一定の勾配で降りている尾根の傾斜が急に変わっている場所のこと(尾鼻)をさす(昔、地崩れがあったと想像される場所)。「タニグチ」とは、沢と沢が出会う場所であったり沢の入口(谷口)(雨が降った時に水量が急に増す場所)。最後の「ドウノマエ」とは、お堂や祠の前のこと。自然への崇敬の念。「水の神様、山の神様」に対しての礼儀である。この言い伝えは三重県で伝えられる。興味深いことに、これが大台ヶ原の山を越え奈良県側にいくと「オザキ・タニグチ・ミヤノマエ」に変る(尾鼻が尾先に、堂の前が宮の前になる)。つまりこのような自然災害の起きやすい所には家を建てはいけない。そして自然への感謝を忘れないようにと言うことだろう。同じような話しは、山梨県の竜王というところでも聞いたことがある。「竜王」の辺りには家を建てるもんじゃないと言う。この場合の「竜王」は、川が蛇行していた様相からついた地名。よって一帯は古くから洪水敷きである、河川の堆積地盤で家を建てるには相応しくないということ。昨年、新潟の山古志村(地震被災の)を訪れた時、驚いた。遠くから高い樹々が残る場所には必ずと言っていいほどそこにはお堂やお宮があったからだ。近くには古い民家も健在だった。確かに予想を超えた地震災害ではあるが「オバナ・タニグチ・ドウノマエ」の言い伝えは明らかなように感じた。今の自然災害は、「地」の脈絡を読めなくなった都市計画や土木技術の責任も大きい。次回は庭づくり隠しポイント「オバナ・タニグチ・ドウノマエ」を紹介します。【2008/09/16】

2008/09/15

お知らせ/庭にはイノチの風が吹く/会期終了

10月19日(日)午後6時30分〜 近江八幡のTae Space「茶楽(さらく)」で庭を巡る話と歌・スライド・語り「庭にはイノチの風が吹く〜庭づくり・樹々との共生の誘い」があります。プロデュース&コンダクター:鳥井しん平、楽士:みやもとはじめ、弁士:かわいつぐお。
Tae Space「茶楽」の建物は、八幡堀端に建つ築160年の土蔵(材木蔵)で八幡堀の舟運を活かした場所にあります。場所:近江八幡市佐久間町17-1 電話:0748-32-8885

2008/09/14

庭を旅する/第三歩 素夢子の庭(京都)★★☆☆☆





京都のビル街・烏丸三条から西に入った所に「素夢子(そむし)・古茶家(こちゃや)」という韓国料理店がある。今日は森林再生に関しての会議、私たちが陣取ったのは外壁と店内の間に設けられた小さなスペースの外テーブルで食事をしながら。店の入口で立ち止まり、前の草花を眺め一言二言、人の声が中まで良く聞こえる。店と道路との間には、版築(はんちく)(*1)で造られた低い壁を持ち、わずかな隙間にたくさんの草を生かし、独特の庭を創っている。面積にして二畳程度の小さなもの。そこに生える草は「雑草」と呼ばれているものたち。店の軒下から道にせり出した柳が唯一の木。店に入るにはまずそれらの雑草をまたぐことになる。とても狭い場所なのに、遠くからでもよく見え、ビルに囲まれた場所とは思えない気持良さ。版築壁と草花だけをみると、どこかお寺の風景を切り取ったようでもある。ここは私が考える「まちのツボ」をしっかり押えた庭だ。小さいながらも効き目は大きい。まちのなかに大きな緑があり、それぞれが連続すればベストだが、今の街の環境を考えると困難である。しかしこんな小さな緑でも要所要所にあり、それがつながればとてもいい環境がまちに生まれるに違いない。密集した街では、新しく1ヘクタール(100m×100m)の公園ひとつを確保することはとても難しい。それよりも、100円パーキング2台分(25m2=5m×5m)の緑地100箇所を確保し、幅1.0mの(分断しない)草地を7.5kmに渡り連続させる(これも同じ1ヘクタール)ことでもさまざな効果が期待出来る。これは決して無理なことではない、なぜなら今や過剰にできてしまった100円パーキングを買い取って、現況の歩道や車道の緑地をもう一度、しっかり生態的に復元・再生すればいいからだ(言うが易しは承知の上)。実現すればすごいエコロジー・シティーができることになる。そのためにも「素夢子」の看板娘の雑草たちが、別の店でも活躍してもらいたいものだ。この程度の余地を草地にするのであれば経営者にとってまったく負担にはならないだろう。つまらない看板よりもはるかに店の魅力アップになる。地に生きた緑の看板が手をつなげばきっと何処にも無い快適できれいな街ができるだろう。街が生んだ環境の悪化は、まず街の中で出来ることから、出来るやり方で解決すること大切。
 会議の席での高田先生(森林生態学)のことば「(自分は、人間は)人類が滅びる日が判っていてもその日まで若木を植える行為をする(するべきだ)」が私にとって今日の宝物だ。(森林再生の最先端の研究者だけにその危機感が伝わってくる)【2008/09/13】

●素夢小・古茶家/add:京都市中京区烏丸三条西入/tel:075-253-1456/open:10:00〜21:00/定休日:水曜日

*1 版築(はんちく):壁を造る場所に両側から板などで囲み枠を建て、枠の中に粘土・土に砂利などを混ぜ、つき固めながら建造した壁もしくは、その工法。身近な素材で強い構造が得られるため、古くから民家の壁、城の土台、古墳などに使われた工法。万里の長城もこの工法で造られている。