2008/08/26

今日の庭/蝉の季節、季節の蝉(2)

ちょうど10日前に「蝉の季節、季節の蝉」の話を書いた。そのお盆のツクツクボウシの声を聴いてから、急に秋づいてきた。あれほどまでに暑かった毎日がウソの様、生きもの達の季節感にはいつも感心させられる。ニュースの季節予報よりもずっと正確かな。さて今日は、ヒグラシの声が聴こえてきた。これも京都の街中で初めて聴いた。少し山の方に行けば出会える蝉だが、街中でその声を耳にするととても違和感が有る・・たぶん山から飛んできたんだろうが。今年の気候は、やはりどこかおかしな気がする。【2008/08/26】

2008/08/24

今日の庭/河童のいる庭

 今日は、滋賀県近江八幡市にあるボーダレス・アートミュージアムNO-MA地域交流事業「河童を探せ!」のワークショップ・第二回目。古い町屋を改装した「尾賀商店」のギャラリースペースが会場。ギャラリースペースといっても床は土間、戸板を外せば外と内の結界はあいまいになり、外の風が身持ち良く流れる。これも「ニワ」空間の一つである。今回の僕は、「河童と生きものが立たされてきた環境」について話した。ご一緒した京都橘大学の小暮さんは「河童と文化や地域」の話しをされた(http://kogure.exblog.jp/d2008-08-23)。それぞれの話しで共通だったのは「あたり前のものこそよく判っていない」、「あたり前のものこそ記録されずに消えていく」ということ。話し足りなかったこともあって、終わってからそのことばを反芻しているうちにふと「にわとり」が頭に浮かんだ。子どもの頃はあたり前のようにまわりにいた生きものである。またその名前「ニワトリ」の語源は、「庭にいる鳥」だからと言うことは、容易に想像される。調べてみるとやはり、「庭の鳥、庭にいる鳥」の意味の「ニハツトリ」で、「ニハツトリ」の連帯助詞「ツ」が落ちて変化した語とある。「ニハツトリ」に対する野生の鳥は、「ノツトリ(野つ鳥)」と呼ばれた。ではなぜ庭(ニワ)に鳥なのか? イギリスを始め他国の庭には、よくニワトリや鳩(ハト小屋)を目にする。彼らはペットであったり食材であったりするが、もう一つ生活に欠かせない大切な役割がある。そのワケは、鳥の糞は植物の三大栄養素「窒素、リン酸、カリ」を含み、即効性のある有機肥料として野菜づくり・庭づくりに容易に利用できるからだ。中でも多く含まれるリン酸は植物の芽や根、実などの成長に役立っている。生育初期に適度のリン酸が吸収されると、その後の生長を良好にし、病気に対する抵抗力も強くなる。現代では、糞害として迷惑な評価しかされないハトも古くから庭づくりには欠かせないものだった。今の生活の中では、よほど豊かな敷地でもないことには鳥のいる庭なんてなかなか造れなさそうだ。特に街中では「あたり前の庭づくり」すら難しいのである。しかし唯一、小学校ならそんな庭づくりも可能と言えそうだ。
余談ですが、子どもの頃に家にはいつも何らかの鳥が沢山(カモ、アヒル、スズメ、ムクドリ、ハト・・・多数)いた、そして彼らの食べ残した餌や糞を毎日、庭に蒔いていた。その所為だったのか庭の草木は年がら年中、生き生きしていた。そして(今想えば)時々、紅葉の葉っぱのお化けのような怪しげな草なんかも生えてきたのでした。
【2008/08/23】

2008/08/17

今日の庭/蝉の季節、季節の蝉(1)

 街中でクマゼミやアブラゼミの死骸を目にすることが多くなった。そろそろ真夏の蝉もおわりの頃を向かえたようだ。そんな今日、今年初めてのツクツクボウシの声を聞いた。この蝉は例年ちょうどお盆過ぎから出現する。この蝉が鳴き出すと秋を感じるが、はたして今年はどうだろうか。ちなみに京都市内(岡崎辺り)では、ニイニイゼミは7月5日頃、クマゼミは7月14日頃、アブラゼミも同じ頃、そしてちょうど1ヶ月遅れてツクツクボウシが現れた。今年はミンミンゼミも聞くことができた、京都ではこの蝉を市街地で見かけることはまずない。鳴き声は一匹だったので何処からか飛んできたのか、それとも幼虫時代に植木と一緒に運ばれてきたのか。関東ではクマゼミが、関西ではミンミンゼミが増えてきたといわれている。街中の生きものが増える、これはなんとなくいい感じ?でもこれには少し訳ありのようだ。今や公園に植えられる樹木の多くは、日本中からやってくる。例えばクスノキは九州から、ケヤキは関東からやってくる。蝉の幼虫は土中で木の根の汁をすって生きている。蝉の幼虫も樹木と一緒に、つまり蝉も現代ではトラックに乗って日本中を旅していると言う訳だ。こんなこと考えると、公園の木を見る時に今までとは少し違った見方も出来そうでしょ。【2008/08/16】

2008/08/15

市民ガーデン(1)自力建設でいこう!


長野県・K市のユニークな市民ガーデンづくりに関っている。この市民ガーデンは、平成17年に市民参加の地域づくりワークショップの中から生み出されたものである。ここまでなら一般の市民参加型計画の公園整備だが、ユニークなのはそのワークショップから園芸を中心とする市民団体が生まれ、その中心メンバーが行政との協力体制を組み、自らで具体的な計画を立て、緑化支援系の助成に応募し、加えて自分たちで公園を造ってしまおう(自力建設)といった動きである。そして地域在住の園芸・造園・建築などの専門家が計画をサポートする。大きな造成や管理棟などの施設は行政に依る基盤整備となるが、本市民ガーデンが完成したおりには、その運営・維持管理を市民団体(環境系NPOを設立)が行う予定である。(もちろんそのための準備もすでに始まっている)多くの都市公園は、行政が計画・建設・運営・維持管理を行い市民に解放されてきた。現在もそのような公園づくりが一般的である。しかし今や公園づくりも、市民の財産として市民自らが考え運営を行う新しい動きも生まれきた。この新しい公園づくりにしばらくつき合おうと思う。【2008/08/15】

2008/08/10

庭を旅する/第二歩 京都府立植物園 ★★★★★


 京都府立植物園は京都市街北部、加茂川のほとりにある。大正13年(1924)1月1日に「大典記念京都植物園」として開園。第2次大戦中は園内に菜園が設けられ食糧増産の場になり、戦後は昭和21年(1946)から12年間連合軍に接収された。このとき多くの樹木が伐採されるなど苦難の時代が続くが昭和36年(1961)4月、憩いの場、教養の場として再び開園。その後、日本の森、洋風庭園、温室、植物園会館、北山門を完成するなど、40年近くの歳月をかけ、平成16年(2004)には開園80周年を迎えた。園の南半分は、バラ園、噴水や滝のある沈床花壇よりなる人工的な庭園。これに対し北半分には、園内唯一の自然林である半木(なからぎ)の森や植物生態園など、北西部角には宿根草・有用植物園がある。温室は、面積・栽培植物の種類ともに日本最大級。ただ残念なことに近年、園内に植栽展示されている苗の盗掘が絶えないと聞く。まったく残念なこと。 さて、植物園の楽しみの一つに入口で配布されている手書きのマップ「きまぐれ便り」(無料)がある。このマップ、園内を散歩する時に大変に具合がいい。以前、だれが書いているのか疑問だったので調べてみた。驚くべきことに2004年12月16日の創刊より園長さん自らが描いたものだった。今年3月には、創刊号から2008年3月29日号(No.175)すべてが合本・刊行された。これは園の歴史資料と共にまとめられた貴重な記録だ。(上のイラストマップが「気まぐれ園だより」夏休み植物園の12以上の楽しみ方版)
 私が植物園を訪れた記憶は小学生低学年の頃までさかのぼる。その頃たびたび父親に連れて来てもらった、その時の園内の様子はすっかり忘れてしまったが不思議と五葉松の名前と場所だけは深く覚えている。きっと五葉松の涼しげな葉姿と樹形の風景、そして何よりも松林一帯に漂うすっきりした空気が体のどこかにきっちりと記憶されている。「たった200円で一日たのしめるやんな〜」とは、園内ですれ違った学生カップルの会話。みなさんも是非、遊びに来て園内にお気に入りの場所や樹木を見つけてください。
「樹木に親しむことは、優れた童話を読むのと同じような効果がある。(松谷茂園長のことば)」まったく同感である。【2008/08/10】
●入園料:一般200円・高校生150円・小中学生80円 但し温室観覧料は別途必要 年中無休(年末年始を除く)午前9時〜午後5時(入園は午後4時まで)夏休み開園時間延長7/19〜8/17 9:00〜18:30 
●行き方:地下鉄北山駅、改札を出て地上に上るとすぐ入口、徒歩3分
●http://www.pref.kyoto.jp/plant/index.html

道具考/その3 ジョウロ(如雨露)


今回は、ジョウロ(如雨露)の話し。雑誌等でよく目にするジョウロのオリジナルデザインは、英国製のHAWS(ホーズ)社のもの。これはピーターラビットの絵本にも登場する。ホーズ社は、1885年に園芸家ジョン・ホーズによって創業、氏は翌86年ウォータリングポットを改良し特許を申請。それによると『かってないこの新しい形は持ち運びと水やりを簡単にし、同時に大量散水が可能で付属品も揃えたものである。』とあるらしい。この時、作られたウォータリングカン(ジョウロ)は完璧なバランスに仕上がり、満水時でも、半分でも、空の状態でもユーザーにストレスをかけないデザインはホーズ社に大きな発展をもたらした。当時、ウォータリングカンと言えばバケツのようで、すべて手作りだっただけに、このホーズの使い勝手のよいデザインと管理された品質は注目を浴び、ロンドン近郊や地方都市の温室栽培家、英国中の造園家・園芸家に広まっていった。今ではブリキ製、銅製に加えプラスチック製のものが作られているがオリジナル・デザインはほとんど変わる事なく続いている。他社からも多くのものが市販されているが品質の良いものは決して安くはない、しかし永く付き合う道具として良いものを選びたい。一つのものを丁寧に永く使うことは、植物を育てる時に大切な気持ちと通じるものがあるからだ。

■なぜジョウロを使うのか?
ジョウロでゆっくりと草花に水を与えることはホースの水播きに比べると少々面倒くさく感じるが、逆に草花の一株一株をよく観察することができる。植物が病気になったり、毎日の成長の変化が判る。草花の種類によって必要な水の量も異なる、そんな時もジョウロを使うことによって与える水の量が容易にコントロールできる。これはホースによる灌水ではなかなか出来ないこと。また、液肥を与えるときは希釈の目安にもなるので必需品となる。

■ジョウロの選び方
・ハス口(蓮口):ジョウロの先につけ水を細かくする部分、名前の由来は形が蓮の実(花が終わった後)に似ていることから。ハス口の細孔はとかくゴミがつまりやすいので、取り外せることが条件。また小さな鉢や草花の根元に直接、水や液肥を与える時はハス口が取り外せる方が便利。
・形と材質:形はおおむね同じだが、持ち手は大きく、首の部分が長いほうが使い勝手が良い。また上部の開口も大きいほうが内部を洗う時に楽。材質は、ブリキ、銅、ステンレス、真鍮、プラスチック等があるが、ブリキ製かプラスチック製が一般的。ただしブリキ製は丈夫だが少々重め、プラスチック製は軽量だが耐候性に欠ける。ハス口がなくパイプ状に細くなっているのは室内用。形は上から見た時に一般的な胴部が丸いタイプのものより、すこし楕円形になったものやハロスター社の少々薄っぺらなタイプ(最近、インターネットで入手出来る)のものが使いやすい。
・大きさ(容量):あまり小さいと頻繁に水汲みが必要、逆に大きいと水を入れた時に重くてなかなか大変。通常の使用では5〜6リットル程度のものが使いやすい。ただし、室内専用であれば1〜2リットル程度が適当だろう。【2008/08/10】

今日の庭/京都府立植物園


昨日は驚異的な雨だった。各地で悲しい事故も起きた。あらためて都市型河川の怖さを知った。さて今日は植物園に行ってみた、思ったとおり樹木たちはとても活き活きとしていた。木々は葉を輝かせ、樹皮に着く苔は瑞々しく、また樹皮の割れ目からは樹液が流れていた。係の方に話を伺うと、今年は水不足、昨日の雨で少しは助かったが一日水を与える作業が無くなっただけとのことだった。そのためだろうかカツラ(*1)のように、秋さながら黄葉し、葉を落とし始めているものもあった。今年の蓮の開花は例年よりも遅いそうだ。これも水不足と高温の影響だろうか。もの言わぬ植物たちも大変な夏を過ごしているんだろうな。(写真:たっぷりと水を含んだ苔をまとったエノキの大木)【2008/7/29】
植物園・夏の開園時間の情報:7月19日(土)〜8月17日(日)まで開園時間を午後6時30分まで延長(入園は6時まで)
*1:カツラは山間部の谷地形に生育する落葉広葉樹、葉は淡い緑のハート形で美しく、秋に黄葉する.

2008/08/04

今日の庭/二本の木

今日の庭は、一般的な庭とは少し違った話題である。「町が家であるとすると公園は町の庭である」と思う。歩道の街路樹も大切な庭の一部と言える。その街路樹・見慣れたイチョウ並木の数本が電気工事のために幹の途中ですっかり伐られてしまい、後は根ごと撤去されるのを待っていた。(右の写真をよく見ると地面から1.5mぐらいのところで幹が無くなっているのが判る)それらの街路樹は翌日、根ごと跡形も無くなった。街中ではたびたび目にする光景だが、いつも痛々しい。バスを待ちながら工事の様子を見ていると「工夫すれば伐らずに済むのに」と素人ながら思った。やがて工事が終われば、何事も無かったかのように同じ種類の木が植えられるのだろう。そしてまたいつか同じようなことが起るに違いない。街路樹のすぐそばには「まちの緑を大切にしましょう」とある。
さて、この一件を目の当りにして、広島城公園のある木を思い出した。写真を探してもう一度見る。「道が先か、木が先か?」どっちにしてもちょっと少し不思議な風景、印象的な木だ。このそれぞれ二本の木の存在・生い立ち、人との関わりを考えるとさまざまな思いが湧いてくる、この違いをどう見るかは皆さんが思うに任せよう。
【2008/08/04】

2008/08/02

道具考/その2 移植ゴテ


移植ゴテは庭仕事に欠かせない道具の一つ、作業をしているといろいろなタイプのものを試したくなる。いくつか使っていると、お国柄や目的の違いが判ってくる。やはり自分の手や指の延長として活躍するものなので使い易いものを選びたいものだ。こどもの頃のおなじみタイプは、土を掘る部分(ヘッド)から柄のところまで金属で一体となっていたもの。どこでも手に入り安くて軽いが、ぺらぺらなので一生懸命に土を掘るとちょうど柄の付け根(首の部分)のところでグニャリと曲り、繰り返し使っている間に折れてしまう。ほったらかしにするとすぐにサビサビ。幸い最近は、ずっと良質のものが入手できるようになったが、残念ながら日本製には満足出来るものが無い(これほど園芸が盛んなのに不思議だ)。そこで登場するのが、イギリスのSpear & Jackson社の製品(愛用しています)。ステンレス製のヘッドに木製の柄、デザインはこれとって特徴が無いが、ヘッドは土を混ぜたりする時に大変に具合の良いカーブを持ち、全体のバランス、ヘッドの大きさと薄さ、柄の角度もバツグン、柄の部分は木製だから寒い時期の作業でも冷たくない。そして、何よりも手の小さな人にもしっかり握ることができる。参考までにイギリスでは、移植ゴテも幼児用、子供用(それぞれ大きさが異なる)のまったく手抜き無しの本格的なものが販売されている。
写真左より、オランダ・SNEEBOER社製(頑丈なステンレス製だがフラットな形のため使い勝手にややくせ有り)、中央の3本が英国・Spear & Jackson社製(どれもとても使いやすい)、右は何処製か不明・アルミ製の細身のもの(鉢苗の植え替えに便利)。写真には無いがカナダ製のアルミ鋳造タイプ(本体と柄が一体のもの)は、大きく握りにくい、刃(本体)の部分が厚い、柄の部分が冷たく疲れる・・・結局、使い物にならなかった。そこで道具箱の中でも自然淘汰が起る。やはり永い園芸の歴史の中で生まれ育ち、残ってきたものはすばらしい。【2008/08/02】