2008/12/09
ベス・チャトー 荒れ地で育(はぐく)む奇跡の庭
NHKハイビジョン特集「ベス・チャトー 荒れ地で育(はぐく)む奇跡の庭」 の録画を観た。(放送:11月27日、午後8:00〜9:50、NHKBShi)ベス・チャトー・ガーデンズは、荒地を美しい庭に変えた「奇跡の庭」と言われている。イギリス南東部エセックス州のこの庭は、かつて果樹園栽培地の中で農地としてあまりにも土壌が悪く捨て去られていた場所。ここの土壌は、2つの要素から成り立っているのだそうだ。ひとつは4千年から1万年も前の氷河期に、溶けて氷河が運んできた砂利が混じった土・・・。そしてもうひとつは、重い粘土質の土・・・。砂利と粘土を合わせ持つ、まさしく植物栽培には不毛の土地。そんな荒れ地を美しい庭に変えた「世界一のプランツ・ウーマン」と呼ばれるベス・チャトー(Beth Chatto)さん(85歳)。庭作りを始めて半世紀、イギリスでも一番雨が少なく乾燥し冬は零下、夏は30度にもなる過酷な土地で1年中ダイナミックな美しさを保つ「奇跡の庭」を作り出してきた。その秘密は植物を花の色だけで選ぶのではなく、葉の形や植物が育つ自然環境に徹底して寄り添い、生物本来の力を引き出すことだと言う。それは9年前に亡くなった夫アンドリューさんとともに育んで来た園芸の理論、そしてベスさんの人生の理念でもあると言う。
庭は、大きく水辺の庭(WETLAND GARDEN)、森の庭(WOODLAND GARDEN)、そして砂利の庭(GRAVEL GARDEN)の3つのゾーンからなっている。特に砂利の庭は、乾燥に強い植物と砂利で構成され、水遣りを一切しなくても育つようエコロジカルな庭造りを実験。彼女の言葉で特に印象に残ったのが「庭づくりと言えども貴重な水を使っていていいのだろうか」、「庭づくりを道徳で考えるのではなくこれは哲学」、「これからの地球温暖化の時代の庭づくりをどう考えるか」・・・。半世紀に渡る経験を通して地球環境も考えて作る彼女の庭作りには、学ぶものが沢山ある。植物層に貧相なイギリスでは使用する植物の大半が他国から移入されたもの。植物に手をかけないでも勝手に育ってくれる日本とは異なり、移入した以上は人が管理をするのが条件、もしくは徹底的に自然風に見せるように手を加えてきた。そんな英国の庭に人が手を加えないでも維持出来るゾーンの提案、そしてそのゾーンにあった植物の選択、きっとそれまでのガーデニングにとっては画期的なことだったのだろう。
イギリスの書店で目にした新しい考え方「エコロジカル・イングリッシュガーデン」や「オーガニック・ガーデン」。一方、日本の庭づくりでおまじないのように使われる「イングリッシュガーデン」。どちらがどうと言うことではないが、英国ではどんどん時代のなかで変わっていく庭との関り方と考え方。ここにイングリッシュガーデンの本当の魅力がある気がする。
番組のシーンの中で面白かったことが一つ。彼女が若いガーデナーにネギの植え方を教えている。ネギの苗を地面に開けた孔(孔をあける道具は多分、折れたスコップの柄)にズボッとさして水をたっぷりと与えている。日本ではネギが高温多湿を嫌う植物であること、また倒れにくくする工夫として、予め乾燥させた苗をウネに倒して置き、根の部分に軽く土をかけるだけ。これは種類が違うのか、土壌が違うのか、気候が違うのか? 彼女が日本の植え方を見るときっと驚くだろうな。
番組全体のストーリーメーキングが少し気にかかるが、彼女の庭での仕草や表情、インタビューは面白い。【2008/12/07】
次回放送予定:2009年1月3日 NHK総合8:00〜9:30
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