2012/06/24

どうなる宿根草・有用植物園?

 「どこにでもある植物園になってしまったな、あの魅力を残して欲しかった」
府立植物園のファンとしての第一印象である。
 自分も一人の設計者なので、他人の現場を見ると様々なことが理解・想像できる。言い換えれば、苦悩も工夫も・・・そしてごまかしも、手抜きも判る。今日は、昨年より半年以上に渡り工事(6月30日完成予定)が行われている京都府立植物園の宿根草・有用植物エリアの出来を楽しみに見てきた・・・残念ながらこれは改悪の一言に尽きるのと思う。

僕は現場を見て二つの問題があると思った。
 まず一つ目は計画・設計内容:この植物園は他国にだしても恥ずかしくない歴史(*1)と内容だと思う。今回整備されているエリアは昨年までエリア内に二つの小さな池を持ちさまざまな種類のトンボ池の生息地だった、つまり植物と昆虫の生態が連携していた。また園路は「芝生」で多くの見学者が裸足でさまざまな植物を巡り歩くことが出来た。幼児にとっても快適な環境だった。植物の展示はもちろんこと、この2点はエリアの魅力をよりいっそう強くしていた。それが見るも無惨な結果である。池はコンクリートの三面張りの垂直護岸(写真下)。今やこんな工法は古い。園路はコンクリート(写真上)、管理は楽だろうが快適さ大きく下がった。この設計をした技術者は、おそらく今までの魅力を見誤ったのだと思わざる得ない・・・どころかそれまでここに来た事も満足になかったのかも知れない。小さな敷地だからこそ活かせる工夫や魅力づくりが出来たはずである。
 二つ目の間違い:施工業者が「植木屋」。 植物園の指導はどこに行った?これでは単なるどこにでもある都市公園造園ではないか。ロックガーデンの配石は造園的でもないし、ましてや自然の岩山のガレ場をイメージするものでもない。ここは植物園である生態的配慮の上で、景観的な造作がされるべきだろう。場づくりの上で生態的な視点を持つ造園家、園芸家に監修を任せるべきである。

 植物の充実や生育はこれからの仕事で、5年、10年と良くなっていくだろう。しかし、土台である基盤整備が間違えば、植物園全体の魅力をも左右しそうだ。大きな費用を伴う今回のエリア改修は誰のためか、その目的が見てこない。今日は、場づくりの骨格をつくる計画や設計がいかに大切であるかを改めて感じた。

 新しいエリアの完成は6月30日、あと1週間。日曜日も働かせる以上はスケージュルが追いついていないのは火を見るよりも明らか。今日の現場を見る限り無理である。 多分、仕事も荒くなるに違いない、仕事とはそんなものである。

 植物園の出口で帰りに「30日に完成できるんですか? 工事中のエリア、前の方が良かったですね」と職員の方に投げかけると、「形だけでもしないとね」そして小さく「そうだと思います・・・」と返ってきた。なんだかもったいない工事しているな。

*1: 日本の植物園では京都府立の植物園日本で最初の公立植物園として、1924年(大正13年)1月1日に開園した。1946年(昭和21年)から12年間は連合国軍に接収され閉園を余儀なくされたが、1961年(昭和36年)4月に再開した。

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